最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1008号 判決 1948年11月18日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人高垣憲臣上告趣意について。
刑訴第四〇三條に「原判決の刑より重き刑を言渡すことを得ず」と規定した趣旨は、判決主文の刑すなわち判決の結果を原判決の結果に比し被告人の不利益に變更することを禁ずるにある。それ故、判決主文において全體として被告人に不利益な結果を生ずべき言渡をしない限り、單に原判決と異り被告人の不利益となるべき犯罪事実の認定をしても同條に違反するということはできない。本件においては、第一審で單純な賭博と認定せられた事実が、控訴審では常習賭博と認定せられ、この點では事実認定が不利益に變更されてはいるが、判決の結果たる主文の刑は、辯護人も認めているとおり輕減せられていることは明白である。論旨は、それ故に理由がない。
よって刑訴第四四六條に則り主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)